下村大輔(やる&たい)ノート

やる&たい=PLAY AND WANT

シナリオ『春 男と女、』

 登場人物


  石堂春男(30歳)
  はったり屋なんだけど実は本気でプロ野球選手を目指している。いつも薄汚れた黒のスーツ    を着て、どこにでもバットを持ってママチャリで移動する貧乏探偵


  女、木下かなえ(21歳)
  (実はあげまん)

     
  斉藤清三(86歳)
  おじいちゃん



○ 夜のはじまり、、、夜半、、、夜中、、、  、深夜、、、丑三つ時、、、
  、漆黒の闇、、  、、、明け方、、、鶏鳴時、、、、、、、
  (カメラFIX、長回し、早送り)

      
  朝、すっごい晴天
  「ガラガラッ」
  古いコンクリの建物の窓が開く、
  全裸の男、石堂春男30歳
  あくびを一つ
  眠気まなこで空を見上げる

    
  カラスが鳴いている
春男 「いい声してんなぁ」


タイトルイン 『春 男と女、』


○ 小汚い場末の「石堂探偵事務所」
  蕎麦屋に電話する、いつもの薄汚れた黒のスーツの春男
春男 「もしもし、いつものカツ丼大盛りね」
女  「うまれる。」
春男 「えっ?」「何?」
女  「う、産まれる〜」
春男 「えっ何が?」
女  「あ、あかちゃんがぁ〜」
春男 「えっ!」
女  「早くしないと、産まれちゃうのぉ〜」
春男 「えっ、何、言ってんの?」
女  「おねがい。。。。」
春男 「わ、わかったよ。そこどこだよ。」
  メモする。
春男 「すぐ行くからな、じっとしてろよ。」
  バットを持ってママチャリで女の家に向かう。


○ 女の部屋、一人暮らしのワンルームのアパート
女  「海がみたい」
春男 「えっ病院じゃねえの?」
女  「どうしても海が見たいの。」
春男 「何、言ってんだよ」
女  「どうしてかわかんないけど海が見たいの。」
春男 「、、、だって、、俺、チャリだぜ。」
  女、無言で車のキーを差し出す
女  「おねがい。。。。」
  懇願する女の顔。瞳が潤んでいる。
春男 「わ、わかったよ〜。」


○ 車の中
  苦しそうに悶える女
女  「はやく〜あっ、、、あ〜」
  テンぱっている春男、エンジンがなかなか、かからない。 
春男 「ちょっと待ってくれよぉ〜」
  エンジンがようやくかかり、発進する車。
女  「あ〜〜〜〜うっ〜〜〜〜〜」
春男 「う、海ならどこでもいいんだろっ?」
女  「うん。」


○ 車の中(夜)
  二人とも落ち着きを取り戻している。
春男 「海なんか何年ぶりだろっ」
春男 「お前は?」
女  「私、はじめてなの。」
春男 「そうなの?」


女  「私、セックスした事ないの。」
春男 「えっ!?、、、、」
  春男、女の膨らんだお腹を指さしながら、
春男 「じゃあ、それなんだよ?」
女  「わかんない。」


○ 夜明けの前の海
  バットを素振りする春男
  車の中ですやすや寝ている女
  太陽が海から出てくる。
  女、起き上がり、車から出て海に向かって歩いていく。
  女、波打ち際で海を見て涙を流している。
  春男、バットを持ったまま女の方に歩いていき、
  隣に並ぶ。

  
  朝日を浴びて逆立ちする春男と女

       
  逆さまの世界(春男と女の目線)
 
  逆立ちをやめる二人
  笑いあう春男と女。
春男 「行こかっ」
女  「うん。」


○ 止まっている車の中
かなえ「誰かいる」
春男 「えっ?」
  車の後部座席に老人の男がうずくまって座っている。
春男 「えっ何? 何だよっ、お前」
清三 「心臓痛い。」
春男 「えっ?」
かなえ「大丈夫?おじいちゃん」
清三 「もう、あかんわ」
  かなえ、春男の顔を見て
かなえ「病院行こっ」
春男 「・・・・」
清三 「い、痛いよぉ〜」
かなえ「行こっ」
春男 「・・・・」
清三 「あ〜〜う〜〜〜〜〜」
かなえ「おねがいっ」
清三 「うぁああ〜」 
  春男、しかたなしに車のエンジンをかける。
  発進する車


○ 車の中
清三 「山にいきたい。」
春男 「あっ?」
 
かなえ「行こっ」 
春男 「まじかよぉ〜」
  かなえ、清三、うなずく


○ 車の中(夕方)
  苦しそうに悶える、かなえと清三
清三 「い、いだい〜〜〜〜〜」
かなえ「あ、あっ〜〜〜〜」
清三 「う゛ぁ、〜う゛ぉ〜〜〜〜〜〜」
かなえ「あっ、ああ、あ〜〜〜ん」
清三 「う`〜うぁ〜^^あっ〜」
かなえ「んっ、あ〜、ん、ん、あ、あ、あああああ〜」  
清三 「しぬ〜〜〜」
かなえ「うまれる〜〜〜〜〜」


○ 車の中
  マジカルバナナ(連想ゲーム)をする三人
  楽しそう。
  

○ 国道沿いの昔ながらのドライブイン
  閑散とした店内
  うどんを食っている三人
清三 「わし、神様やねん。」
春男、かなえ「・・・・・・」
  うどんを食う春男とかなえ


○ 山の入り口
  車がとまる。
  清三、顔色がすごく悪くなっている。
  春男、清三をおんぶする。
  三人、奥へ進む。
  

○ 山の中
清三 「あそこがええ」
  先の方にでっかいハルニレの木がある。
  三人、歩いていき、春男、ハルニレの木の根元に清三をそっと降ろす。 
  風が吹く。 
  どっどど どどうど どどうど どどう
清三 「風がふいてないとあかんねん。」 


清三 「かなえちゃん」
かなえ「なに、、おじいちゃん」
清三 「今度、デートしよな」
  かなえ、半べそで
かなえ「うん。」
清三 「春男」
春男 「ん?」
  清三、ポケットから金色の棒を取り出して差し出す。
春男 「何これ?」
清三 「形見や」
  春男受け取る。


清三 「あ、もうそろそろかな、、、色なくなってきた。」  


清三 「うわっ〜やっぱ死ぬん恐いわぁ」


清三 「あ〜あ」


清三 「おかあちゃ〜ん。。。。おかあちゃ〜ん。。。。おかあちゃ〜〜〜ん」
  死ぬ
  かなえ、泣きくずれる。
かなえ「あ〜〜〜〜。」
  かなえ、子供のように泣きじゃくる。
かなえ「え〜ん。え〜ん。。。」
  清三の死体、泣くかなえ、素振りする春男
   

○ 斉藤清三(斉藤一)の人生のスライドショー
  誕生、幼少期、青年期、戦争時代、結婚、家族、絵描き時代、農業時代、
  娘の成長、孫の成長、いろいろな、出会い、別れ、再会 、変化、時間、
  、、  、映画「春男と女、」の撮影。


○ 山の中にある広場
  中央にある台の上に立つ、春男。隣にかなえ。
  春男、スーツの内ポケットから 清三にもらった金色の棒を取り出して
  振りかざす。 
  
  すると、木々の間などからいろいろな楽器を持った、チーズ、死体、
  カップル、紙くず、バクテリア、白人、かえる、サイボーグ、岩、主婦、
  ガチャピン、ゴキブリ、人形、やくざ、キリン、坊さん、いろいろな機械、
  春男のバット、切り裂きジャック、中年サラリーマン、花、ばい菌、
  ブレイクダンス、老若男女、ユニコーン、スクラップ、とかげ、
  五十円玉がやってくる。    
  
  「ドレミの歌」がはじまる

        
  さあ おけいこをはじめましょう♪
  やさしいところから♪
  えいごのはじめは A-B-C♪
    
  「A-B-C!」

  
  木の蔭に隠れていた、
  ユダヤ人、海老、ジャンキー、亀、小学生、ゴミ、サムライ、牛、
  半魚人、忍者、くらげ、おかあさん、もやってくる

  
  うたのはじめは  ドーレーミー♪

  
  「ドーレーミ♪」

  
  はじまりの3つのおとです ドーレーミ♪
  
  アボリジニ、50ccバイク、怪物君、牛、かなえの車ドーレーミー♪

  
  ドレミに惹かれてぞくぞくとやってくる。
  
  おもしろい人、木、幽霊、鳥、ケチャ、女子高生、暗黒舞踏、貝、ゾンビ、
  ぬいぐるみ、象、刑事(デカ)、核兵器、先生、バッファローマン、黒人、
  魚、裁判官、などなど。

  
  ドレミファソラシ
  「もっとやさしくやれないかなぁ」
  「酒のむか」
  「う〜ん」
  
  大統領、野菜、ロボット、怪我人、ミジンコドレーミ。

        
  ド はドーナツのド♪
  レ はレモンのレ♪
  ミ はみんなのミ♪
  ファ はファイトのファ♪
  ソ はあおいそら♪
  ラ はラッパのラ♪
  シ は シらろらりん♪
  さあ うたいましょう Oh Oh Oh Oh♪
  ドレミファソラシ ド ソ ド♪
  
  ソドラファミドレ ソドラシドレド♪

        
  犯罪者♪ドーレーミー♪漁師♪

  
  こ と ば を の せ て ♪
  さ あ う た お う よ ♪
  「トゥギャザー」
  どんなときにも れつをくんで♪
  みんなたのしく ファイトをもって♪
  そらをあおいで ランランランランランランラン♪
  シらシらろらりん さあうたいましょう♪
  ソ ド ラ ファ ミ ド レ ♪
  ソ ド ラ シシ ラ ♪
  ソファ〜♪
  ミレ〜♪
  シド〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♪
  ソ ド

 
  追伸
  宇宙人、ミイラ、うんち、モアイ、ヘラクレス、ネパールのおばちゃん、
  お医者さんは地中でミミズと一緒に分解の仕事をしながら歌っている。

  
  プロレスラー、沖縄空手、バンダム級のボクサー、黒帯、ムエタイ横綱
  土佐犬、チャンピオン、魔法使い、酔拳雑草、スペインの牛、兵隊、
  マサイ族の若者、ストリッパー、マトリックス
  などなどはドレミにあわせて異種格闘技戦を繰り広げている。

  
  ドレミの歌はオーケストラからブルース、ジャズ、ヒップホップ、レゲエ、
  ガムラン、西アフリカ、ボサノバ、ありとあやゆる国や地域の民族音楽
  コンピューター音楽、に変化していく。


○ カメラ、ふかんで、広場から宇宙へGoogleEarthみたいに、ぐわーって、
  ズームバック(ズームアウト)する。
  
  宇宙全体にこだまする「ドレミの歌」


○ 広場
  大雨が降ってくる。
  地震、雷、火事、台風、火山噴火、津波、日照り、飢餓、などなどがおこる。
  みんな、びちょびちょでどろどろでボロボロになって歌い、踊り、演奏し、
  闘い続ける。   
  

  終わる。
  と、同時にカラっと晴れ渡り、でっかい虹が出てくる。
  拍手大喝采。
  拍手大喝采。

  
  
  かなえ、出産する

        
  「なぜか、春男と瓜二つの玉のような男の子でした。」
  
                     
                                                                    おしまい